2005-06-01

床下の小人たち

こちらも大人になってから読み始めた作品。Vanilla(同居人・パートナー)が子供の頃愛読していたらしく、ぜひ読めと勧められた。

Borrowers(借り暮らしと訳されている)の人々の生活を描いた物語なのだが、そのリアリティがすごい。彼らは夢の小人ではなく、生活者なのだ。食べ物のこと、家具のこと、大きい人たちから借りて形作られる彼らの暮らしが丹念に描かれている。
主人公アリエッティとポッド(父)とホミリー(母)という3人家族を中心に物語は進むのだが、私は特にホミリーが素晴らしいと思った。最初大きな家に住んでいる頃のホミリーはヴィクトリア朝的なピューリタニズムを基盤としていて、その規範の中で生きている印象がある。娘のアリエッティは冒険心に飛んでいるので、そんな母に行動を止められたりとがめられたりすることに不満を持つ。が、大きな家を追われ、野原で生活し始めると、はじめは不満と不安で一杯だったホミリーが徐々に解放されていくのだ。娘と木登りをして開放感を感じたり、行動や決断が大胆になっていく。中学生くらいの子供を持つ母親、という立場の人物の変化をこういう側面から書いていくことはなかなか出来ないと思う。大体は一家の安全弁としての役割を振るのではないだろうか。非常に興味深い。
まだ3作目までしか読んでいないので今後の展開は分からないが、私の希望としてはホミリーが自分の規範から逃れ出て、より開放的な人になっていって欲しいと思う。

現在岩波少年文庫から年に1冊ずつ新版が発行されているのだが、もう少し発行ペースをあげて、せめて年に2冊出してくれると嬉しいんだけども。

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